from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

リスナー考 -核心に迫ること- (一心塾だより 第44号)

 フォーカシング・サンガではグループの中で皆が見守る中、リスナーとフォーカサーをやらなければならないのですが、特にリスナーに立候補するのは大変勇気がいることと思います。

 リスナーをする上で、フォーカシングの流れが頭の中に入っていることは非常に役立つと思います。色々なタイプのフォーカサーがいるのですが、流れは同じです。

  1. 気がかりなことの概要を聴く。何が気がかりなのか本人もよくわからないときはからだの感じを尋ね、そこから連想される概要を聴く。長くなってきたら「まとめの伝え返し」をする。
  2. フォーカサーが言いたかったことの核心を捉え、短い言葉で力強く伝え返す。
  3. からだの感じを尋ねる。一段落ついた感じがあるなら終了する。

 なんだか簡単です。実際、難しく考えず、リラックスして聴いていたほうがうまくいきます。フォーカサーが経験豊富な方なら、1から2へすんなり自分で進んでくださいます。そうでない場合はいろいろ苦心しますが、それがリスナーの醍醐味と言えるかもしれません。

 「核心は何か」というところに迫ることを忘れて、路頭に迷うフォーカシングをときどき見かけます。フォーカサーに共感しながらピッタリ寄り添っているのですが、ふたりとも、どこに行って良いのかわからなくなっているのです。概要を聴くときは少し距離感のある聴き方のほうが良いかもしれません。だから伝え返しは控えめが良いでしょう。でも「興味を持って聴いてます」という非言語メッセージは、頷きや表情で常に発します。

 何が核心かということは、当然ですが、フォーカサーが感覚的にわかっていることです。リスナーはフォーカサーとともにその感覚に少しずつ焦点を合わせていきます。まさに「フォーカシング」ですね。しかし、核心に触れかかると、「批評家」が出てきたり、ネガティブ思考に陥ったりするフォーカサーも多くおられます。核心へ至る道が霧やヤブで隠されてしまう感じです。核心に触れると変化が起きますから、その変化の予感をなんだか怖いもののように感じて、抵抗が生じるのも当然なのです。リスナーのほうで「これは批評家だ、これはネガティブ思考だ」と気づいていれば、道を見失わないで済みますが、怖い気持ちへの気遣いも必要です。ある程度道を切り開いたところで、一段落し、あとはクロッシングタイムに委ねるほうが安全、ということもあります。

 早いうちにフェルトセンスに言及して、それの処理を進めていくというスタイルを持ったフォーカサーやリスナーもいらっしゃいます。リスナーは、そのフェルトセンスが本当に問題の核心を表現しているものなのかどうか、常に注意深く感じている必要があります。そのフェルトセンスに注目していたら、お腹の下の方で別の感覚が出てきて、どうやらそっちのほうが核心らしい、というようなことはよくあります。

 リスナー上達のためには、フォーカシングセッションをオブザーバーとして観察しながら、リスナーの立場に立って、核心は何だ、どうたどり着くのだ、と興味深く聴いていると良いと思います。そしてクロッシングタイムのときに質問されるのも良いと思います。

 

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