from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

「一致的応答」 一心塾だより 第26号

 相手の気持ちが楽になり、自然な変化が促される対話法として二つの態度があります。
 一つは相手の身になって聴く、共感的傾聴。もう一つは共感的傾聴を一区切りした後に、自分の心に湧き上がっていることを相手に伝えること。こちらの方は「一致的応答」と名前を付けておきます。自分の本心と一致した応答をするからです。フォーカシング・サンガではフォーカシングセッションにおいて共感的傾聴、クロッシングタイムにおいて一致的応答がなされるよう促されています。

 ジェンドリンは「体験的応答」という1968年の論文でこう述べています。「私の反応は私たちの相互作用の一部である。それはクライエントに返さなくてはならないし、それによってクライエントが、相互作用の、今は私の側に起こっているその部分を次に進めることができる。もし私が反応を返さなかったら、私たちはそこで行き詰まってしまう。もちろん、私には自分の応答の仕方についての責任がある。つまり、私は応答の際、自分の反応をクライエントに正直に、反応を見える形で返さなくてはならないし、クライエントが私の中に起こしたことに対してさらに応答できるよう行動しなくてはならない(この論文はTIFIの日本語ページhttp://www.focusing.org/jp/6steps_jp.htmlから読めます)」

 本当に正直であるというのは、なかなか厳しいものです。つい遠慮しますから。でも配慮は必要です。配慮しつつできるだけ正直な反応を伝えるのが対話の醍醐味ではないでしょうか。

 ここで気を付けなければならないのが、安全・安心ルールにもなっている「変化を求めない」ということです。「あなたはもっと~した方がいいと思うよ」と言いたくなるのですが、これは一致的応答というより頭の反射的な反応と言えます。つまり概念からの反応です。通常の会話の大半は概念と概念のぶつかり合いで、体験過程尺度としては低いレベルに留まっています。概念からの反応をしたくなる手前の正直な気持ちは「なんかイラっとする」とか「教えてあげたいっ」とか、そんな感じかもしれないですね。その気持ちを自分で捕まえたときに、30秒くらいセルフ・フォーカシングしたら配慮の利いた一致的応答ができるのかもしれません。それはフォーカサーの自然な変化を大いに促すことになるでしょう。