from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

万能感(自己の過大視)

 10〜15才くらいの特に男子に万能感を持っている子によく出会う。20代でもその名残を匂わせている人が多くいる。「それくらいできる」と周囲には自信たっぷりに吹聴するのだが、実際は全くできない。そして「できないんじゃなくてやらないだけだ」とうそぶく。単なる嘘つきではなく、それが嘘であることを自分で理解していないようだ。ただ現実と直面することから逃げている。「井の中の蛙」という諺に近いが、「コップの中の蛙」とでも言った方がもっと近いだろう。これはどういう現象だろうか。
 これまでここで行ってきた論旨に従えば、自己の境界(エッジ)を認識する能力が育っていないということなのだろう。だからかなりインフレ気味に自己を過大視してしまい、「それくらいできる」と錯覚するのだそれによって周囲からバカにされても、その惨めさを受け入れる能力も育っていないから、同じパターンを繰り返す。
 やはり手取り足取り法を使って、本当にエッジを乗り越えさせてやることが大事だと思う。それによってやっとエッジを認識する力が育つだろう。それまでの成長段階で乗り越えるべきエッジを乗り越えてこなかったことが下地にあり、それを補償するために自己の過大視が常態化したと考えたらよいだろう。
 また養育者の過保護もエッジの認識能力を阻害するだろう。本人がエッジに直面する場面において、養育者がわざわざ直面させないように立ち回るのである。それは「甘やかし」であって手取り足取り法ではない。手取り足取り法はあくまでも本人がエッジを乗り越えるためのサポートである。甘やかしは、本人がエッジに直面しないように過保護にすることなのだ。
 ただ、万能感を持つ子は必ず過保護に育てられたとはなかなか言えないかもしれない。もともとの個性という要因もあるのだから。しかし手取り足取り法は誰に対しても通用するだろう。