from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

論理と共感の際どいバランス

   先日、杉田議員のLGBT批判に反駁して、自らが同性のパートナーがいることをブログで公表した日本文学者ロバート・キャンベル東大名誉教授ですが、ラジオのインタビューを聴いていて、その言葉が非常にフォーカシング的で感銘を受けました。氏のブログを読んでいたら、東京大学入学式来賓祝辞で次のように述べられていました。

「さて、大学でできること。それは頭とからだを使って、自分が好奇心をもって向かおうとしている目標について他者に説明する言葉を磨くこと。ファクト(事実)を切り出して、論理と共感というきわどいバランスをその都度に繰り出すスキルを身に付けることに尽きると思います。これが本来の教養であると、私は考えます。(平成30年4月12日)」

  「他者に説明する言葉を磨くこと」これですね。氏はこれを実践して来られたのだと納得しました。その過程で自然に自己の"体験"にアクセスして言葉を紡いで来られたのでしょう。しかも、インタビューを聴いていて思うのは、そのアクセスと言語化のスピードの速さ、選ばれる言葉の的確さ、そして語彙の豊富さ。これだけの日本語を喋る人は日本人でも少ないかもしれません。

   「論理と共感の際どいバランス」。これは引用以前の文章を読まないと分かりにくいですが、他者に説明するには自分なりの論理を持たねばならず、しかし他者の心に届けるには、相手の状況に共感的でなければならず、この二つのことは確かに際どいバランスの上にあると思います。

  ここからはジェンドリン哲学の出番です。フェルトセンスは自己と他の間に広がります。それを言語化するとき、「論理と共感の際どいバランス」は上手く行くことでしょう。