from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

一心塾だより 第15号

詩とフォーカシング
 
寒中お見舞い申し上げます。マイナス4℃を体験しましたが、これが2℃になったらなんだかホッとしている自分がいて、ちょっと可笑しくなりました。
 
 NHKラジオの第2放送でカルチャーラジオというのをやっていて、毎週木曜日は「文学の世界」です。この1~3月は批評家・随筆家の若松英輔さんが「詩と出会う 詩と生きる」というテーマでお話されていますが、今日はその第1回目をちょっと引用させていただきます。ちなみにインターネットのストリーミング放送で聞くことができます。
 
「私たちは心の中に詩の種をとても豊かに持っている。誰かに与えられるものではなくて自分の中に持っている。詩は技術にとらわれると上手く書けない。自分の心の中にある美しい想い、だけど容易に言葉にならないもの、そういうのが詩なのだ。」
 
「詩が生まれるのは意識のもう一歩奥から。詩とは「情(こころ)のコトバ」。漢字の「言葉」ではなく「コトバ」。まだ言葉になる前のもの。うごめく意味そのもの。そこから詩が生まれる」
 
「何かを知る、何かについて知るという2つの「知る」がある。学校で習ったのは「何かについて知る」ということ。「何かを知る」ということはもっと別のこと。そのことそのもの知るということ。何かについて知るだけでは、ものごとの核心の回りをグルグル回るだけ。何かを知るとは、本当に核となるものと出会うこと。熱を帯びて、我々に訴えかけてくるものに直接触れること」
 
「詩の言葉は量的世界と質的世界の違いを教えてくれる。詩の世界は質的世界。誰か一人に伝わればいい。量的世界とは、例えばとにかくたくさん情報を持っていることを善しとするような世界。詩の中のただひとつの言葉に出会うだけでもいい。それで詩と出会ったことになる。」
 
「詩というのは理解することではなく味わうこと。わからなくても美しいと思うことがある。理解するのではなく味わう。うまく書こうとしないこと。自分の思いをそのままに書く。それはとても難しいこと。上手い、下手の世界から自分を自由にする。人のものを読むときにも上手い下手にこだわらないようにする。目の前のものをそのまま受け取ってみよう。」
 
「すぐれた詩というのは自分に宛てられた手紙のようなもの。読めばそれに対して返事を書きたくなる。その返事もまた詩である」
 
「人はなぜ詩を書かねばならないのか。詩を書かずにいられない衝動がある。本能に近いもの。多くの現代人が場合眠らせてしまっている本能。なぜなら量的世界にいるから。詩的世界は質的世界。たった一人の人のためのもの。
 
「日本の詩の歴史は挽歌。亡くなった人へおくる言葉。だからこそ和歌は廃れることなく今日まで続いている」
 
 本当に、私がフォーカシング・サンガやこころの天気で実現したいと思っていることをそのまま語っていただいたようで、とても感激です。フォーカシングで出てくる言葉は全て詩なのだといって間違いないでしょう。