from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

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現実認識を歪める思考を見極める

 前回はネガティブ思考やポジティブ過ぎる思考の止め方について書きました。簡単に言えば、「この思考は現実認識を歪めている」と気づいて、呼吸にしばらく集中することで平常心に戻るよう日々練習するのみです。

 やり方は簡単ですが、私たちはそのような思考に真実味を感じていますので、そうやすやすとこれを手放そうとしません。だから「この思考は現実認識を歪めている」と気づくこと自体が難しいのです。また思考は伏流水のように表に現れることなく流れているものも多くあります。頭の中でもはっきり言語化されておらず、漠然と思っているという状態がもっとも強力に現実認識を歪めています。なぜなら伏流水のような思考は自分自身で気づきにくいからです。

 現実をありのままに見ないなんて、そんな不自然なことをなぜ私たちは身につけたのでしょうか。やはり成長の過程のどこかで、そんなふうに考えたほうが都合が良いという事態があったのだと思います。その方が心が傷つかないから、その方が楽だから、その方が手っ取り早く得するから、そんな子どもなりの無自覚な計算が身についてしまうのでしょう。

 しかし、すべての思考が現実認識を歪めているわけではありません。今考えていることが現実認識を歪めているか否かを見極める方法を私たちは知っている必要があります。

 その思考に浸っているときにどんどん不安になる、ますます腹が立つ、いよいよ面倒臭くなるというのであれば、これは思考の背景にある感情が増幅されているわけですから、その思考は現実認識を歪めている可能性があります。またポジティブ過ぎる思考に浸っているとだんだん興奮してくるので、これもやめたほうが良さそうです。

 逆に、その思考に浸っているときに落ち着いてくる感じ、目の前が明るくなるような感じ、心が晴れる感じがあるなら、その思考はしっかりした現実認識の上に成り立っていると言えます。その思考によって得られる結論は、自分に良く、相手に良く、世間に良いものとなります。さらに必然性も備えています。