from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

「自我」の3つの意味

 「あの人には自我の強いところがある」という言い方には、少し否定的なニュアンスがあります。「我が強い」とも言います。「自分にこだわりがあって、他者を受け入れることができにくい」という意味に使われていると思います。そこから「自分にこだわりがなく心が広い」人を「無我」と捉えるのではないでしょうか。

 本来の仏教的な意味での「無我」は、「それだけで単独に存在するものはない」という哲学的真理を表しています。どんなものも関係の中にのみ存在しているといことです。

 「我が強い」人は、自分の意見や考えに自信があって、他を寄せ付けないところがあるのですが、「自分が絶対」と思うことは、やはり本来的な意味での「無我」から外れていますね。

 ところで心理学では「自我」はどんな意味を持っているのでしょうか。フロイトの創始した精神分析では自我は、「こうであるべき」という社会的な要請と「こうしたいなあ」という内なる欲求の間に立って右往左往している「機能」であるという位置づけです。ですから「自我機能」という言い方をしたほうがいいかもしれません。

 しかしこの自我機能も、鍛えることで社会的要請と内なる欲求をうまくマネジメントできるようになります。そうなるとストレスを感じることなく、社会の中でのびのび行きていけます。そんなパワフルな自我機能を持つためにも、人の考えを受け入れたり、社会のために働いたりして、「無我」に近づいたほうが良いのではないでしょうか。