from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

一心塾だより 第12号

 いつもフォーカシング・サンガに参加してくさる方が、セッションの中で「自分は波を受ける岸になる」と表現されました。私は感想として、「岸は、陸と海の境界、つまりエッジ。そこには貝とかカニとか、いろんな生物が生まれ育つところ。とても豊かなところ」と述べたところ、とても喜んでいたきました。

 フォーカシング的にはエッジは概念(陸)と非概念(海)の境界にあります。あるいは町と山の境界にある「里山と言ってもいいかもしれません。そこは新鮮な言葉や意味が今まさに生まれ出ようとする場所です。フォーカシングというのは案外、岸辺や里山に親しむのに似たことなのかもしれません。一人で浸るも良し、仲間と楽しむも良しです。
 里山と言えば、先日、島根県雲南市加茂町にある「山本空外記念館」に行ってみました。心安らぐ里山の中にあります。空外上人は旧制広島文理大学(広島大学)で西洋哲学を教えていたのですが、原爆に遭ったのがきっかけで浄土宗僧侶となり、縁あって加茂町の寺にて念仏三昧、書道三昧の生活を送られるようになったのです。その書は、「自然の命が躍動している心の書」と高く評価され、良寛に並び称せられるほどです。
 空外上人は「無二的人間」ということを常々仰せられました。相手や対象を生かし切ることで、二者関係から無二の状態に至ることの大事さを説かれたのです。そしてその書に接すると、なるほど無二の境地が迫力を伴って伝わってきます。フォーカシングに通じるところがあるように思います。記念館は10月のみオープンです。