ヨーガの根本経典と言われる『ヨーガ・スートラ』に修行のための八段階が記されている。その第1段階が「禁戒」である。非暴力、正直、不盗、不貪、禁欲の五つがそれである。この中の不盗について経典は次のように述べている。
不盗の戒行に徹したならば、求めずして、あらゆる地方の珠玉が彼のところへ集まる。(2.37、佐保田鶴治訳)
わがまま、つまり甘えていることに気づかない者は、この戒を犯し続けている。親や周囲の人の親切心、慈悲心を懐から奪い取り続けている。このことに早く気づく者は自立を得て、慈悲心を起こすだろう。そしてあるがままに至るとき、求めずして珠玉が集まるに違いない。