from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

甘え

日常会話の中のギフト <一心塾だより 第47号>

「ロジャーズのカウンセリングを学んだ後、妻の話を伝え返しながら聴いたら激怒されましたよ」。私をこの道に導いてくださった恩師が、笑いながらそうおっしゃるので、つられて私も笑いましたが、これはたいへん大きな課題だなあと感じたものです。 カウンセ…

リスナー考Ⅱー 体験的理解について ー <一心塾だより 第46号>

「体験的理解」という言葉は、2012年に日本仏教心理学会誌に「体験的理解による『甘え』の超越」という論文を発表したときに初めて使いました。この論文は、私のホームページの論文のページ(https://www.sinsined.com/paper)から読むことができます。 この…

「世間」と「甘え」 ( 一心塾だより 第45号)

『同調圧力 ー日本社会はなぜ息苦しいのかー』(鴻上尚史・佐藤直樹著)を読み終わって頭が忙しくなっているので、この場を借りて整理してみたくなりました。この本で徹底的に語られる「世間」というものに、「甘え」の問題が絡んでいると思えるからです。 …

父性を考える <一心塾だより 第42号>

『こころの天気を感じてごらん』の第2部「甘え論」を書いているときに、父性について考えていました。甘えが母性に関係が深いことはわかっていましたから、では父性とはなんだろうというわけです。 甘えは一体化を求める心です。言葉で言わなくてもなんでも…

フォーカサー・アズ・ティーチャー (一心塾だより33号)

フォーカサー・アズ・ティーチャー(FAT)というのは、ペアでフォーカシングする際に、フォーカサー(語り手)がリスナーの聴き方に任せきりになるのではなく、「こんな風な聴き方をして欲しい」という要望を随時出しながら、自らのフォーカシングに没頭する…

「芯の強さ」とは?

先日ある方にお会いして、「とても芯の強い人だなあ」という印象を持ちました。苦労を重ねた経験もお持ちでしたが、楽観的でポジティブな考えの持ち主でもありました。 その方とお会いした後、「芯の強さって何だろう?」と少し考えてみました。 ヨーガのア…

「甘えとストレス」 一心塾だより 第29号

3月に『甘えとストレス』という本を上梓しまして、私としては2冊めの著書となりました。1冊めは『こころの天気を感じてごらん』で、こころの天気描画法について書いたのですが、なぜか後半の第2部は「甘え論」になっています。こころの天気を描くとどうし…

マインドフルネス・ヨーガ (一心塾だより28号)

今なされている心身の活動に100%集中し、自分が今何を行い、何を感じているかにしっかりと気づいていることを「マインドフルネス」(以下、MF)といいます。 例えば食べているときに、食べることのみに集中します。しかしそれでも「噛むこと」という動作へ…

環境への甘え

一人の人間にとって、自分以外のすべてのものは「環境」である。例えば口うるさい親がいるとしたら、それも環境である。もちろん家が裕福であるとか、貧乏であるとか、そういうことも環境である。環境とは私たちが「付き合っていく」対象である。 「自分以外…

さり気ないやさしさ

「立ってる者は親でも使え」と言うことわざがあります。「悪いけど、それ取ってくれない?」と、「悪いけど」という言葉でも頭につけてくれれば、一応こちらの人格を尊重してくれているのだなと思って、快く応じられますが、命令調に言われると腹が立ちます。…

当たること、当たられること

家族や友だちにグチられたり、感情的に当たられたりすることは良くあると思います。あるいは、あなたがそのようにしているご本人かもしれませんね。 昔、私はある友人からよく当たられることがありました。私が担当している役割をマジメにやっていないとか、…

保険制度はアメリカの精神に反する

一年くらい前だっただろうか、オバマ大統領が掲げる政策の一つである、アメリカ国民の皆保険化が、暗礁に乗り上げているという報道があった。共和党支持者による反対理由は、「健康を守るのは自己責任なのに、保険制度はアメリカの精神に反する」ということ…

甘えの完成

どんな人間も心の平安を求めています。赤ちゃんから老人まで例外はないと思います。いや俺はめちゃくちゃに暴れたい、という欲求を持っている人がいるかもしれませんが、その人は暴れなければ平安にたどり着かないプロセスの最中にあるということです。 平安…

フォーカシングのすすめ

前回、受容と理解について相手に一切期待しない方が良いと書いたのですが、そう言い切られると辛くなる人もいらっしゃるだろうと思います。どうにも自分の気持ちを持て余してしまって、誰かに理解されたい、受容してもらいたいと願うのは自然なことでしょう…

相手に理解と受容を期待しない

家族や職場などの身近な人間関係において、私たちは相手に自分のことを理解して欲しい、受容して欲しいと無意識的に期待するようになる。だから相手がそうしてくれないと相手に対して何となく腹を立てたりする。不安になったりする。そして相手が自分のこと…

自己を哀れむ人

自己を哀れむとは自己に対する同情である。「かわいそうに」と自分に対して思うその背景には「誰も私を救ってくれない」、「誰も自分の気持ちなど理解できない」という不満がある。それはつまり誰かに心のケアしてもらいたいという甘えの裏返しである。しか…

禁戒

ヨーガの根本経典と言われる『ヨーガ・スートラ』に修行のための八段階が記されている。その第1段階が「禁戒」である。非暴力、正直、不盗、不貪、禁欲の五つがそれである。この中の不盗について経典は次のように述べている。 不盗の戒行に徹したならば、求…

わがままとあるがまま

わがままとあるがままの違いについて昔ずっと考えていた。その違いは紙一重のようでいて大きく隔たってもいる。 二つを見分ける重要なポイントは、その人が甘えに気づいているかどうかではないだろうか。わがままな人は自分が周囲の人に甘えていることに気づ…

罪悪感

罪悪感というのは、誰かの期待に応えていないのではないか、誰かの怒りを買っているのではないかという漠然とした不安ではなかろうか。その誰かが自分の「つながり対象」(甘え論における第一渇望)であるなら、罪悪感は深いだろう。つながりへの渇望が満た…

「拗ねる」ということ

相手に何かを期待していたのに、それが果たされないとき人は拗(す)ねる。ただし本当に拗ねるのは期待が無自覚であるときだ。期待が意識化できているときはただ「残念」と思うだけである。 子どもが親に「もっと注目して欲しい」と無自覚的に期待しているの…

甘えと感情消化

私たちは感情を消化したいという欲求を持っている。自分で消化できなければ他者に感情をぶつけたり、癒してもらおうとしたり、いろいろと無意識に画策しているものだ。他者に向けられたそれらの行為を総称して「甘え」といっていいかもしれない。 つまり甘え…

万能感(自己の過大視)

10〜15才くらいの特に男子に万能感を持っている子によく出会う。20代でもその名残を匂わせている人が多くいる。「それくらいできる」と周囲には自信たっぷりに吹聴するのだが、実際は全くできない。そして「できないんじゃなくてやらないだけだ」とうそぶく…

手取り足取り法

無自覚な甘えを効率よく満たす方法が「手取り足取り法」です。親や先生が子どもに対して行うと、子どもはとても素直になり、そして元気になります。 子どもは(大人もですが)“できない”と“できる”の境界を持ちます。そしてその境界で他者の手助けを必要とし…

甘えの自覚は自立への道

もしあなたが、例えば母親に「甘えている」と自覚したなら、そのときから母親に対する態度が変わることでしょう。甘えていけないわけではありません。むしろ母親としては甘えられることを嬉しく思ったりもするのですから。しかし無自覚に甘えられると嫌にな…

甘えは心のエネルギー

甘えが満たされると、私たちは元気になります。だから甘えは心のエネルギーなのです。カウンセリングで元気になるのは、カウンセラーがクライエントの「わかってもらいたい」という甘えを満たしてあげるからです。 子どもは遊ぶことで元気になります。一緒に…

甘えとは相手に対する期待

人間は一人では満たしがたい欲求を持ってしまいます。「話を聞いてもらいたい」、「遊んでもらいたい」などなど。でもはっきり相手にそう伝えられないことも多いし、自分でも相手に何を望んでいるのかわからないこともあるでしょう。だから甘えはいつもなん…

身近な人間関係ほどむずかしい

身近な人間関係ほど、知らずに甘えが出ますから、相手がこちらの暗黙の甘えを察してくれなければ、何となく不快になります。だから家族は難しいんですよね。