from 一心塾 ー 心身教育研究所 ー

カウンセリング、フォーカシング、仏教、ヨーガ

日常会話の中のギフト <一心塾だより 第47号>

「ロジャーズのカウンセリングを学んだ後、妻の話を伝え返しながら聴いたら激怒されましたよ」。私をこの道に導いてくださった恩師が、笑いながらそうおっしゃるので、つられて私も笑いましたが、これはたいへん大きな課題だなあと感じたものです。 カウンセ…

リスナー考Ⅱー 体験的理解について ー <一心塾だより 第46号>

「体験的理解」という言葉は、2012年に日本仏教心理学会誌に「体験的理解による『甘え』の超越」という論文を発表したときに初めて使いました。この論文は、私のホームページの論文のページ(https://www.sinsined.com/paper)から読むことができます。 この…

「世間」と「甘え」 ( 一心塾だより 第45号)

『同調圧力 ー日本社会はなぜ息苦しいのかー』(鴻上尚史・佐藤直樹著)を読み終わって頭が忙しくなっているので、この場を借りて整理してみたくなりました。この本で徹底的に語られる「世間」というものに、「甘え」の問題が絡んでいると思えるからです。 …

リスナー考 -核心に迫ること- (一心塾だより 第44号)

フォーカシング・サンガではグループの中で皆が見守る中、リスナーとフォーカサーをやらなければならないのですが、特にリスナーに立候補するのは大変勇気がいることと思います。 リスナーをする上で、フォーカシングの流れが頭の中に入っていることは非常に…

考えることの是非 (一心塾だより 第43号)

コロナ禍でお休みが続いていますが、哲学カフェを2年ほど島根大学の川瀬先生(現在は神戸女学院大学教授)と一緒に開催していました。 「なぜ人はウソをつくのか」とか「<お金>ってなんだろう」とか、わかっているようで実はよくわかっていないテーマにつ…

父性を考える <一心塾だより 第42号>

『こころの天気を感じてごらん』の第2部「甘え論」を書いているときに、父性について考えていました。甘えが母性に関係が深いことはわかっていましたから、では父性とはなんだろうというわけです。 甘えは一体化を求める心です。言葉で言わなくてもなんでも…

フェルトセンスの出現を待つ <一心塾だより 第41号>

コロナ巣ごもりも終わりが見えて来ましたね。油断は禁物ですが、ちょっと出掛けて気分転換したいところです。 ところで、出かけようと思ったとき、どの服を着ていこうかと迷うことがあると思います。ここできちんとフォーカシングするなら、きっと適度に自己…

脳の刺激減少中 <一心塾だより 第40号>

4月半ばから松江市内の公民館が休館になっているので、私のマインドフルネス・ヨーガ教室も休講中です。32年やって来て、こんなに長く教室をやらないのは初めてのことです。しかし教室がないと、なかなか本格的にはヨーガができないものですね。家でパソコン…

ZOOMの時代到来 <一心塾だより 第39号>

大事な人を死に至らしめ、様々な生産活動をストップさせている新型コロナウイルスですが、この環境の変化は我々に新たな展開をもたらしています。 ジェンドリンは哲学的主著『プロセスモデル』において、カブトムシの足が一本折れたなら、新しい歩き方をすぐ…

批評家 <一心塾だより 第37号>

フォーカシングはうまくできない、自分には向いていないと思っている人は、「批評家」に悩まされている場合が多いと思います。 批評家とは、常に自分の頭の中に存在して、自分を批判する声です。「どうせお前にはできっこない」、「なんてダメな人間なんだ」…

被害感情 <一心塾だより 第38号>

前回書きました「批評家」については、反響がいつも以上にあり、改めて批評家に悩まされている人は多いものだなと思いました。また、反響の中に「被害感情について知りたい」というコメントがありましたので、今日はそれについて考えてみたいと思います。 被…

四つの聖なる真理 (一心塾だより第36号)

明けましておめでとうございます。今年も一心塾だよりをよろしくお願い申し上げます。 四つの聖なる真理 年末からディビッド・ブレイジャー氏の『フィーリング・ブッダ』(藤田一照訳)を読んでいます。仏陀が最初に説法した四聖諦(ししょうたい)について…

雑念を活かす瞑想 一心塾だより 第35号

雑念は、悪者扱いされることが多いですが、自然に出て来るものに善悪の価値付けなどするから、「集中できない!」などと、イライラの原因になってしまいます。「よく出てきてくれました」と、大事に受け止めてあげるのが「雑念を活かす瞑想」です。雑念は心…

フォーカサー・アズ・ティーチャー (一心塾だより33号)

フォーカサー・アズ・ティーチャー(FAT)というのは、ペアでフォーカシングする際に、フォーカサー(語り手)がリスナーの聴き方に任せきりになるのではなく、「こんな風な聴き方をして欲しい」という要望を随時出しながら、自らのフォーカシングに没頭する…

探索の楽しさ

「このレバーを押すと餌が出てくるんだ!」と気づいたときに、猿の頭からドーパミンという快楽ホルモンがドパっと出てくる、ということが実験で確かめられています。生活を快適にしたり、愉快さを感じられるものにしたりするのに、私たちがいろいろ探索行動…

「芯の強さ」とは?

先日ある方にお会いして、「とても芯の強い人だなあ」という印象を持ちました。苦労を重ねた経験もお持ちでしたが、楽観的でポジティブな考えの持ち主でもありました。 その方とお会いした後、「芯の強さって何だろう?」と少し考えてみました。 ヨーガのア…

寝る前のお祈り

『アメリカの小学生が学ぶ教科書』に、向こうの子どもが寝る前に唱える祈りの言葉が載っていました。 Now I Lay Me 「お休みの祈り」 Now I lay me down to sleep, これからおやすみの床につきます I pray the Lord my soul to keep. どうか、神さまわたしの…

フォーカサーの集い in しまね

8月24日(土)、25日(日)の二日間、島根県民会館にて「フォーカサーの集い in しまね」が開催されます。全国からフォーカシングの愛好者、研究者が集まり、様々なワークを参加者と共有します。 24日(土)の10:00~12:00は一般公開ワークショップですので…

現実認識を歪める思考を見極める

前回はネガティブ思考やポジティブ過ぎる思考の止め方について書きました。簡単に言えば、「この思考は現実認識を歪めている」と気づいて、呼吸にしばらく集中することで平常心に戻るよう日々練習するのみです。 やり方は簡単ですが、私たちはそのような思考…

思考や行動を歪める感情の取り扱い 一心塾だより 第30号

不安、自己否定、怒り、無気力、執着、嫉妬、孤独感、劣等感、自責感、めんどくさい、自己憐憫・・・ネガティブ感情を挙げたらキリがないのですが、これらは強い引力で心を引きずり込み、思考や行動を歪めます。逆に「自分は何でもできる凄いやつだ」、「皆…

「甘えとストレス」 一心塾だより 第29号

3月に『甘えとストレス』という本を上梓しまして、私としては2冊めの著書となりました。1冊めは『こころの天気を感じてごらん』で、こころの天気描画法について書いたのですが、なぜか後半の第2部は「甘え論」になっています。こころの天気を描くとどうし…

マインドフルネス・ヨーガ (一心塾だより28号)

今なされている心身の活動に100%集中し、自分が今何を行い、何を感じているかにしっかりと気づいていることを「マインドフルネス」(以下、MF)といいます。 例えば食べているときに、食べることのみに集中します。しかしそれでも「噛むこと」という動作へ…

フォーカシングにおけるマインドフルネス

今なされている心身の活動に100%集中し、没入することを「マインドフルネス」(以下、MF)といいます。 といっても我を忘れているわけではありません。ちゃんとその活動を行っていることに自分で気づいています。 例えば食べているときに、食べることのみに…

ちょっとだけがんばるコツ

「がんばる」とか「がんばって」という言葉が、人によっては辛く響く場合があるので、あまり使われなくなってきたように感じています。 でも、がんばりたいこともあるんですよね。そういうときに「がんばれ」と言ってもらうと励みになることも確かです。だか…

フェルトセンスと体験過程 (一心塾だより 第27号)

「よくわからないけど、何だかモヤモヤするような感じが胸の奥の方にある」というように、フェルトセンスがすでに感じられているとき、フォーカシングの手順としては、それがどんな事柄と関連したフェルトセンスなのか問いかけたり探ったりしてみます。また…

環境への甘え

一人の人間にとって、自分以外のすべてのものは「環境」である。例えば口うるさい親がいるとしたら、それも環境である。もちろん家が裕福であるとか、貧乏であるとか、そういうことも環境である。環境とは私たちが「付き合っていく」対象である。 「自分以外…

「向き合う」ということ

ヨーガのアーサナ(ポーズ)を行うときに、「一番刺激のあるところに集中します」と指導してたのだが、今日から「一番刺激のあるところに向き合います」と、言い方を改めることにした。 「意識を向ける」という意味では両者は同じことなのだが、「集中」の対…

あなたはどう変わりたいのか?

「教育は変化を求める」という命題をもう少し考えてみたい。 変化を求めるのが、他者や組織であればきついストレスを感じることになる。時々は暴力を伴うこともある。学校で体罰、会社でパワハラが無くならないのは、変化を求めているからに他ならない。もし…

変化を求める教育と、自発的変化を促すカウンセリング

私が力を入れて行っているフォーカシング・サンガでは、安全・安心ルールというものがあって、「守秘義務」、「どんな気持ちも尊重する」、「変化を求めない(心が自発的に拓ける過程を尊重し、支援する)」となっている。 中でも「変化を求めない」というこ…

「一致的応答」 一心塾だより 第26号

相手の気持ちが楽になり、自然な変化が促される対話法として二つの態度があります。 一つは相手の身になって聴く、共感的傾聴。もう一つは共感的傾聴を一区切りした後に、自分の心に湧き上がっていることを相手に伝えること。こちらの方は「一致的応答」と名…